2012年10月31日水曜日

iPadの経済学、タブレット端末の勝者を占う - TRENDYヒット研究所 - 日経トレンディネット

iPad miniやSurfaceは勝者になるか?

 以上のような分析の観点からは、iPad miniについて巷でよく言われているような、競合商品であるNexus 7やKindle Fireが200ドルであるのに対して最安価格330ドルと130ドル高いといった点は、あまり意味がないのかもしれない。

 それは、現時点で米国の景気はだいぶ良くなっており、特に消費者マインドがだいぶ改善してきたという報道が相次いでいるからである。消費者からすれば、冬の時代は終わりつつあり消費を増やしたいはずなのであり、もしかしたら130ドルというのはあまり有意な価格差ではないかもしれない。

 かつ、iPad miniと競合商品を比べると、そこでのアプリやコンテンツの数がまったく違うし、かつブランド力やデザインでも明らかにアップルの方が上であることは間違いないのではない。

 そう考えると、7型のタブレットでもアップルの一人勝ちとなる可能性はあるのではないだろうか。もし結果がその通りとなり、かつアップルが経済状況も勘案して330ドルという価格設定を行っていたとしたら、アップルのマーケティング能力はすごいと言わざるを得ない。

 一方、それではSurfaceはどうだろうか。第4世代iPadと同じ10インチで、価格もiPadと同じで最安が500ドルであるが、苦戦は免れないのではないだろうか。それは、Surfaceの売りとなる点が経済状況に反しているからである。

 iPadにないSurfaceの売りは、マイクロソフトの仕事用ソフト(ワード、エクセル、パワポなど)を使えることにある。しかし、最近の米国経済に関する報道をみると、消費者心理は明らかに上向いて来たが、その一方で企業は設備投資を減らし出していることを考えると、オフィスでの導入は期待できない。

 そうなると、家計の購入に頼るしかないが、iPadと同価格でアプリやコンテンツは少ないけど仕事用ソフトは使えるものを個人が選ぶかというと、疑問と言わざるを得ない。不況を脱しつつある中で個人の消費がまず向くのは、やはりこれまで抑制してきたエンターテイメントなどへの支出だからである。

マイクロソフトのタブレット端末「Surface」。日本では未発売

経済全体の動向も注視しよう

 もちろん、これらは私個人のドタ勘であり当たるかどうかは分からない。ただ、大事なのは、iPadなどのネット関連の新製品の将来を考える場合、ネットという閉じた世界だけで考えた意見を述べる専門家や評論家が多いが、それでは不十分ということである。

 ネット関連の製品も消費の一部である以上、その売れ行きなどにはマクロ経済の状況など実体経済も大きく影響するのであり、そうした意識を常に持つことが大事ではないだろうか。

著者

岸 博幸(きし ひろゆき)

岸 博幸

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、エイベックス・マーケティング取締役。1962年生まれ。一橋大学経済卒、コロンビア大学ビジネススクール卒業(MBA)。86年通商産業省(現・経済産業省)入省。資源エネルギー庁、内閣官房IT担当室などを経て、当時の竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化など構造改革に携わる。98~00年に坂本龍一氏らとともに設立したメディアアーティスト協会の事務局長を兼職するなど音楽、アニメ等のコンテンツビジネスのプロデュースにも関与。2004年から慶應大学助教授を兼任、08年から現職。



Kingo Sasa【笹  謹吾】شكرا 🌻



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