2012年9月16日日曜日

春日部市出身 脳科学者 茂木健一郎氏。母校 日川高校にて あお(1)昨日、山梨の日川高校で講演した。スーパーサイエンスハイスクールである。質疑応答の時間になって、でかい身体の男の子がおずおずと立って、「あのう、ぼく、オカルトに興味があるんですけど」と言う。「幽霊とかに興味があるんですけど」「脳科学的にどうですか」と聞く。あお(2)「あっ、そうなんだ」と言った。完全に想定外の質問だったが、こっちにも作戦がある。「君さ、二十世紀最大のクリエーターは誰だと思う?」と聞いた。「はあ」「クリエーターって、わかるよね。新しいもの作る人。ぼくは、二十世紀最大のクリエーターの一人は、アダムスキーだと思う。」あお(3)男の子は、きょとんとしている。「アダムスキーってさ、何を作った人か知っている?」「いや、ちょっと、わかりません」「あのさ、宇宙人が乗ってくるやつあるじゃない。」「UFOですか?」「そうそう、その、空飛ぶ円盤をつくったのが、アダムスキーという人。」あお(4)「アダムスキーがさ、空飛ぶ円盤の写真を撮ったんだよね。というか、はっきり言うと、捏造したんだよね。だけど、その姿が人々の印象に強く残ったから、それから、いろいろな人がアダムスキー型の円盤を見るようになった。空飛ぶ円盤は、実際にはないよ。想像で人間がつくるんだ。」あお(5)「面白いと思わないか。アダムスキーがさ、空飛ぶ円盤を捏造すると、それまでそんなもの見たことがなかった人たちが、次から次へと空飛ぶ円盤を見た、と言い出す。人間の想像力って面白いね。ぜんぶ脳がつくった脳内現象だけどね。くわしくは、『脳と仮想』という本に書いてあるよ。」あお(6)男の子との会話をさらに続けた。「君さ、幽霊って、どんな格好で出てくるの?」「さあ。」「たとえばさ、恨みを持って死んだ女の人が幽霊で出てきたら、どんな感じ」「こうですか?」男の子は、自分の身体の前で、両手をだらりと垂らした格好をする。「そうそう、それ!」あお(7)「その幽霊の格好をつくったのが、丸山応挙という人。応挙が、だらりと手を足らした幽霊の絵を描いたから、人々がそういう幽霊を見るようになった。足がないっていうのも、同じ。面白いね、人間の想像力は。一人のクリエーターが作ったビジョンが、後世を支配するんだからね。」あお(8)「空飛ぶ円盤も、幽霊も、科学的には存在しないよ。そんなものはない。だけど、人間の脳の中には、あるね。脳内現象としてね。それは、想像力が作り出したもの。でも、その想像力の中でも、説得力のあるものとないものがあって、説得力のあるものだけが、残っていくんだね。」あお(9)アダムスキーの空飛ぶ円盤と、応挙の幽霊。そのような想像力が、男の子が興味を持っているという「オカルト」の文化をつくっていく。素朴にそういうものが存在すると信じているのもいいけれど、成り立ちを考えるともっとおもしろい。脳は案外不安定で、ないものを見ちゃうからね。 以上、連続ツイート第717回「アダムスキーの円盤と、応挙の幽霊」でした。 Kingo Sasa【笹 謹吾】شكرا 🌻

あお(1)昨日、山梨の日川高校で講演した。スーパーサイエンスハイスクールである。質疑応答の時間になって、でかい身体の男の子がおずおずと立って、「あのう、ぼく、オカルトに興味があるんですけど」と言う。「幽霊とかに興味があるんですけど」「脳科学的にどうですか」と聞く。あお(2)「あっ、そうなんだ」と言った。完全に想定外の質問だったが、こっちにも作戦がある。「君さ、二十世紀最大のクリエーターは誰だと思う?」と聞いた。「はあ」「クリエーターって、わかるよね。新しいもの作る人。ぼくは、二十世紀最大のクリエーターの一人は、アダムスキーだと思う。」あお(3)男の子は、きょとんとしている。「アダムスキーってさ、何を作った人か知っている?」「いや、ちょっと、わかりません」「あのさ、宇宙人が乗ってくるやつあるじゃない。」「UFOですか?」「そうそう、その、空飛ぶ円盤をつくったのが、アダムスキーという人。」あお(4)「アダムスキーがさ、空飛ぶ円盤の写真を撮ったんだよね。というか、はっきり言うと、捏造したんだよね。だけど、その姿が人々の印象に強く残ったから、それから、いろいろな人がアダムスキー型の円盤を見るようになった。空飛ぶ円盤は、実際にはないよ。想像で人間がつくるんだ。」あお(5)「面白いと思わないか。アダムスキーがさ、空飛ぶ円盤を捏造すると、それまでそんなもの見たことがなかった人たちが、次から次へと空飛ぶ円盤を見た、と言い出す。人間の想像力って面白いね。ぜんぶ脳がつくった脳内現象だけどね。くわしくは、『脳と仮想』という本に書いてあるよ。」あお(6)男の子との会話をさらに続けた。「君さ、幽霊って、どんな格好で出てくるの?」「さあ。」「たとえばさ、恨みを持って死んだ女の人が幽霊で出てきたら、どんな感じ」「こうですか?」男の子は、自分の身体の前で、両手をだらりと垂らした格好をする。「そうそう、それ!」あお(7)「その幽霊の格好をつくったのが、丸山応挙という人。応挙が、だらりと手を足らした幽霊の絵を描いたから、人々がそういう幽霊を見るようになった。足がないっていうのも、同じ。面白いね、人間の想像力は。一人のクリエーターが作ったビジョンが、後世を支配するんだからね。」あお(8)「空飛ぶ円盤も、幽霊も、科学的には存在しないよ。そんなものはない。だけど、人間の脳の中には、あるね。脳内現象としてね。それは、想像力が作り出したもの。でも、その想像力の中でも、説得力のあるものとないものがあって、説得力のあるものだけが、残っていくんだね。」あお(9)アダムスキーの空飛ぶ円盤と、応挙の幽霊。そのような想像力が、男の子が興味を持っているという「オカルト」の文化をつくっていく。素朴にそういうものが存在すると信じているのもいいけれど、成り立ちを考えるともっとおもしろい。脳は案外不安定で、ないものを見ちゃうからね。
以上、連続ツイート第717回「アダムスキーの円盤と、応挙の幽霊」でした。


Kingo Sasa【笹  謹吾】شكرا 🌻