2013年9月17日火曜日

2020年東京五輪の経済効果はどれほどか | BPnetビズカレッジ | nikkei BPnet 〈日経BPネット〉

2020年東京五輪の経済効果はどれほどか

 2020年の夏季オリンピック開催都市が東京に決まりました。とてもうれしいことです。東京での開催は、1964年に行われた東京五輪以来56年ぶりになります。
 そこで多くの人が気になるのは、東京での開催による経済効果はどれくらい期待できるのか、という点です。東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会は、五輪開催の経済波及効果は約3兆円(2兆9609億円)に上ると試算しています。別の調査機関では150兆円にも上ると見積もっているところもあるようですが、私は残念ながら、国民全体に経済効果が実感できるほどの効果は得られないのではないかと考えています。もちろん、気分的にはかなり盛り上がりますが、経済効果はさしてないと考えているのです。今回は、東京五輪が経済に与える影響について、私の考えを述べたいと思います。

経済効果は景気を浮揚させるほどの力はない

 東京五輪開催に向けて、どれくらいの経済効果があるのか。まず、競技場や選手村などの関係施設整備費として、3560億円が計上されています。

 東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会によると、今後7年間の経済波及効果は約3兆円(2兆9609億円)になると試算していますが、そのうちの大部分を占める大会運営費や観戦客など支出は2019年と2020年に集中すると考えられるため、2013年から見込まれる施設整備の支出は、この3560億円です。その他の投資額を入れても5000憶円弱です。

 元々、東京五輪はコンパクトな五輪にするということでしたから、追加のインフラ整備もそれほど大きな額にはならいのです。

 ちなみに、今年度に執行される公共事業費は、どれくらいあるのでしょうか。2013年度の一般会計予算のうち、公共事業関係費は5兆3000億円、2012年度補正予算では約4兆円、合計で約10兆円近くの予算を計上しています。この額に比べると、東京五輪の関係施設整備費は小さな額です。それも数年にわたって支出されるのです。

 私は、残念ながら、東京五輪の経済効果はそれほど大きくないと考えています。前回東京で開催された1964年の経済効果を思い起こす人もいらっしゃるかもしれませんが、当時と今とでは、経済規模が全く違うからです。

 1964年の日本の名目GDPは、およそ30兆円弱。現在は約480兆円ありますから、当時の経済規模は現在の16分の1程度しかなかったことが分かります。

 なおかつ、1964年当時のインフレ率は3%強、その前後の年は5%を超えていました。もっと驚くべきなのは、実質成長率が10%前後もあったということです。当時の日本は、北京五輪当時の中国ほどの経済成長をしていたのです。

 このように当時の日本は、高度経済成長期の真っ只中でした。池田首相が所得倍増計画を打ち出したのが1960年。そして東京五輪開催のために世界銀行から借款を受けて、新幹線や首都高速道路を造りました。こうしてインフラの整備を急速に進めたことが、経済成長を加速させた部分が大きいのです。

 一方、現在の状況を振り返ってみましょう。このコラムでも何度もお話ししてきましたが、今のGDPは1990年代初頭から20年以上も停滞しています。さらに、政府がインフレ目標を設定しなければならないほど、デフレが進んでいる状況です。

 そして今回の場合は、インフラの整備はほとんどありません。逆に、今はインフラの老朽化が問題になっています。首都高速道路の改修工事も行われることになっています。これは必要な工事ではありますが、単なる耐震工事程度なら五輪後も経済に貢献し続けるというものではありません。

 このように、1964年と現在とでは、経済規模も経済状況も全く異なっているのです。これから3560億円の建設費用が使われたとしても、一部の建設会社やゼネコンは潤うかもしれませんが、景気を浮揚させるほどの力は、おそらくありません。それが3兆円だとしてもやはり経済の起爆剤というには力不足です。

 2019年から2020年にかけて、大会運営費や観戦客の消費などが期待できると考えられていますが、どの程度の規模になるのでしょうか。その規模を先ほどの招致委員会の試算からざっくりと計算しますと、全体の2兆9609億円から3600億円を差し引いた2兆6000億円ほどになります。3兆円という規模は、現在のGDPの0.6%程度にしかなりません。

 ただ、気分的に明るくなりますから、経済という側面から考えても、五輪開催は悪いことではないと思います。それから、私たちが1964年の東京五輪で夢を見せてもらったように、今の子どもたちに夢を見せてあげたいという気持ちもあります。ですから、東京開催自体はとても喜ばしいことだと思います。

 しかし、経済効果はあまり期待しない方がいいということです。一方、経済的なことは別として、現状の日本の状況を考えれば、オリンピックを契機に、徹底的に地下鉄やオリンピック関連施設のバリアフリー化をして欲しいと思います。そうすれば、オリンピック後も、ますます高齢化する社会への貢献は大きいと思います。

 ただし、東京の施設整備が進めば進むほど、東京一極集中が進むという懸念があります。地方の疲弊や被災地の状況を私たちは忘れてはならないことです。

 東京五輪よりも大切なのは、アベノミクス成長戦略第二弾です。東京五輪開催の報道に浮かれてしまって、成長戦略第二弾の内容が疎かになってしまっては困ります。本格的な成長には、徹底した規制緩和や課税ベースを拡大しての法人税率引き下げなどの抜本策が必要なのです。



Kingo Sasa【笹  謹吾】شكرا 🌻



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